噺家名鑑その5「柳家喜多八」

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柳家喜多八(やなぎや きたはち)

1949年 10月14日生れ  東京都練馬区出身  本名は林 寛史(はやし ひろふみ)  
1977年2月 柳家小三治に入門
1978年9月 前座名「小より」
1981年5月 二ツ目昇進「小八」と改名
1983年9月 真打昇進 「喜多八」と改名

百花繚乱の落語界で、これほど独自の立ち位置を築き上げた人も少ないだろう。まず、そのイメージ。最近はあまり言わなくなったが、「虚弱体質」を自ら売りにしており、高座に上がった時点で疲れている。ただ、その実は、まくらをふり終わり噺に入ると共に変貌するという、そのキャラクター設定が秀逸。

そして、廓噺を中心とした男くさい噺が似合う、少しばかり苦み走った風貌。いい男と言ってもいい。どちらかというと小さい声と、江戸前の猛烈な早口。聴きづらいかもしれない。そして、トップランナーの「さん喬」「権太楼」とほぼ同い年の同世代なのに、両師とは兄弟弟子である「小三治」の弟子で、五代目小さんの孫弟子にあたる。

このキャラクターと、年齢のギャップが、今の落語界の階層を思い切りわかりにくくしている張本人と言っていいだろう。極めつけは、「さん喬」の弟子「喬太郎」や、「歌武蔵」といった明らかな若手と一緒に落語教育委員会というふざけた名前の人気の会をシリーズでやっており、その冒頭では毎回コントまで披露している。

小さんの孫弟子で、「小三治」の弟子で、「さん喬」と同世代で、「さん喬」の弟子の「喬太郎」とコントをする。その幅広さが、師の魅力そのものだ。落語は、本来、自由なものだと思っている。今でこそ伝統芸能のくくりではあるが、始まった時はエンターテインメントの一ジャンルに過ぎなかったはずだ。落語がその自由さを失ってから久しいが、その自由さを取り戻している一人と言っていい。それもかなりいい加減な感じで。

何かに疲れた男が演じる、かなり滑稽な人々。「喜多八」にかかると、落語の登場人物は突如として活き活きと輝きはじめる。それを嬉々として、そして疲れた風で話す姿はかなり魅力的で、今の落語界では稀有な存在だ。


柳家喜多八 其の壱
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柳家喜多八 其の弐
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柳家喜多八 其の参
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