噺家名鑑その6「柳亭市馬」

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柳亭市馬(りゅうてい いちば)

1961年 12月6日生れ 大分県豊後大野市出身 本名は右藤 泰幸(うとう やすゆき)
1980年3月 5代目柳家小さんに入門
1981年4月 前座名「柳家小幸」
1984年5月 二ツ目昇進「柳家さん好」と改名
1993年9月 真打昇進 4代目「柳亭市馬」を襲名

柳家の看板を掲げる、若手というか中堅というか。ここが一番難しい。61年生まれで80年入門は決して早くはない。ただ、遅くもない。そして師匠が小さんだ。それが、若手のイメージを損なっている。しかし本人は、当たり前なのだろうが、そんなことはどこ吹く風。「唄う正統派」としての人気者の地位をほしいままにしている。

小さんの弟子としての正統派の芸を基本としながらも、大柄な体を有効に響かせることによって生まれる声の良さ。そして、その美声をもって素晴らしい音感も持ち、歌がうまい。となると歌好きになるのは当たり前で、とにかく高座で歌いたがるというイメージが定着している。事実、歌手としてCDを一枚出しており、高座でもその喉を披露することも多い。独演会では、歌いまくる。それも懐メロ、昭和歌謡を。

「市馬」の芸は、分かりやすいと言っていい。声はよく通り、口調も穏やか。程よい江戸弁と、語り口のスピードも心地よく、すべてにおいてバランスが取れている。そして、柳家の古典をきっちりこなす。フラ(素の状態で醸し出される面白さ、雰囲気)があるからいたずらにふざける必要もない。こう考えると、「市馬」は、噺家として必要である要素を全て元から備えていると言っていい。そんな恵まれた才能が語る落語が、つまらないわけはない。

色気のある若旦那や、芝居噺など、芸の幅も広く、そしてなによりわかりやすい。江戸の「粋」はあれど、小難しい理屈とは無縁の存在なのだ。迷ったら、「市馬」を聴くことを私は、おススメしている。外すことのない安定感抜群の存在だ。

唄う正統派とは、ただの正統派ではないということを声高に表しているキャッチフレーズだが、いったい誰が考えたんだろうか。言い得て妙で、でも、すごくおかしい。


柳亭市馬 其の壱
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