噺家名鑑その7「瀧川鯉昇」

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瀧川鯉昇(たきがわ りしょう)

1953年 2月11日生れ 静岡県浜松市出身
1975年4月 八代目春風亭小柳枝に入門 前座名「柳若」
1977年2月 師匠廃業により5代目春風亭柳昇の門下に
1980年2月 二ツ目昇進「愛嬌」と改名
1990年5月 真打昇進 「春風亭鯉昇」と改名
2005年1月 「瀧川鯉昇」

このビクター落語会再発売シリーズで唯一の「落語芸術協会」所属。他は全員「落語協会」所属の噺家だ。その点からも、他の噺家とは明らかに一線を画す何かがある。ただ、その何かがよく分からない。そのよく分からなさ加減が、「鯉昇」の最大の魅力なのだろう。

きっちりとした古典をこなすと思いきや、師にかかると「千早ふる」はモンゴル出身の力士の噺に、「時そば」は「蕎麦処ベートーベン」となってしまう。いたずらに古典をいじくり回すのではなく、必要な設定を必要に応じて変更しているだけなのだが、それがとにかくおかしい。そして、その突飛さは、師そのものが醸し出す「フラ(噺家がもつ独特の面白み、雰囲気)」そのものでもある気がする。

まず、そのルックスがずるい。53年生まれだから、このビクター落語会シリーズでは半ばより少し上という年齢だが、風貌は、最年長レベルと言ってもいい。最近、「落語芸術協会」の会長である「桂歌丸」が同い年だと思い始め、「鯉昇さん」と呼ぶようになったという逸話すらある。その逸話すら出所が本人だから、信用ならないが、とにかく面白い。

高座に登場するなり、一息ついて、客席を眺めまわしてそのまま黙りこくる。もちろん、笑いが起こるが、それでも黙っている。それはオリジナリティの高さであり、奇をてらっているわけではないというのが、「鯉昇」の最大のポイントだ。通常の寄席などでは時間の関係上難しいが、本寸法を謳うこのシリーズでは、「味噌蔵」や「御神酒徳利」といった大ネタを披露している。そして、その完成度の高さたるや、舌をまく。実力は折り紙つきだ。

フリージャズのアドリブも、美術の抽象画も、基礎がしっかりしているからこそ、デッサン力に長けているからこそできるもの。「鯉昇」のキャラ設定は、実は、緻密なはずだ。


瀧川鯉昇 其の壱
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瀧川鯉昇 其の弐
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