噺家名鑑その10「古今亭菊之丞」

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古今亭菊之丞(ここんてい きくのじょう)

1972年 10月7日生れ 東京都渋谷区出身 本名は小川亮太郎(おがわ りょうたろう)
1991年5月 古今亭圓菊に入門
1991年7月 前座となる 前座名「菊之丞」
1994年11月 二ツ目昇進
2003年9月 真打昇進
2013年3月 平成24年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞

2000年代真打の活躍が今の落語界の盛隆の一因であることは確かだが、その中でもある種の異色と言えるのが「菊之丞」だろう。 新作や改作、現代的なスパイスを効かせる等のスタイルとは真逆の、古典をきっちりこなす正統派だ。しかし、正統派ではあるが、相対的にはかなり異色であると言っていい。そう、「菊之丞」は多くのパラドックスを孕んでいる。

中学生の頃から噺家を志して学校で披露するためにネタ数も増やし、進路を決める三者面談において担任の先生が親に「彼を噺家にさせてください」と懇願したという逸話が表す通りの、根からの落語好き。 まくらでもよく触れているが、その当時から江戸言葉が自然と出てしまい、友人にからかわれていたという。どこまでが真実かはわからないが、「菊之丞」の高座はそんなことを信じさせる魅力にあふれている。

よどみなく流れる江戸弁。美しい所作。まるで当時の役者を思わせるようなルックス。これらの様々な要素に、時に威勢よく、時になまめかしく人物を語り分ける話芸の前に広がるのは、見たことはないがなぜか懐かしい江戸の風景と、活き活きとした江戸の人々だ。

これぞ古典落語といえる「菊之丞」の芸は、現代的な側面はない。現代的ではないが、古めかしさも全くない。 誤解を恐れずに言えば、まだ40歳を少し超えたばかりの若手で、ここまで目の前にしっかりと古典落語の世界を描き出してくれる噺家は、他にいない。その意味でも、「菊之丞」は異色で、正統派なのだ。

13年3月には、24年度芸術選奨新人賞受賞とアナウンサーとの結婚という公私ともに充実し、今もっとも幸せな噺家と、他の噺家からまくらで散々いじられているのも微笑ましい。


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