噺家名鑑その9「入船亭扇遊」

hanashika_photo_yoko_senyu

入船亭扇遊(いりふねてい せんゆう)

1953年7月5日生れ 静岡県熱海市出身 本名は岩田茂(いわた しげる)
1972年11月  入船亭扇橋に入門 前座名「扇ぼう」
1977年3月  二ツ目昇進「扇好」と改名
1985年9月 真 打昇進 「扇遊」と改名

安定感のある語り口、非常に良く通る声、華やかさをまとった佇まい。そんな扇遊の落語はいつも、江戸の大店の 旦那から、喧嘩っ早い職人衆までもいきいきと目の前に登場させてくれる。そのどれもが明るくカラッとしているのもまたいい。

昭和6年生まれの入船亭扇橋の弟子と して、しっかりした基礎の元に築き 上げられた演技力と、これもまた師匠譲りのユーモアも深く、どこまでも落ち着いた気分で古典落語の世界へと誘ってくれる。どちらかと言え ば古典を古典としてしっかりと伝えてくれるオーソドックスなスタイルであり、派手さこそないが、実力はずば抜けている。

72年に扇橋に入門し、77年 に二ツ目昇進。これ以降頭角を現し始め、83年にはNHK新 人落語コンクール優秀賞と国立演芸場若手花形演芸会金賞という二つの重 要なタイトルを二ツ目にして手にするという快挙を成し遂げる。85年に真打昇進を果 たし、92年には文部省芸術祭賞を受賞。

ビクター落語会DVDに収録された「野ざらし」と「文違い」はまさに扇遊の実力と個性が十二分に味わえる演目と言っていいだろ う。「野ざらし」は、女性の骨を川で釣り上げたその夜に骨が生前の姿でお礼に来たという話を聞いて、自分も釣り上げようと四苦八苦す るというばかばかしい噺だが、扇遊の演じる能天気な主人公はとにかく明るく楽しい。また、「文違い」は男女のやや陰湿な関係を描いた 物語だが、扇遊の手にかかるとシリアスさこそ失われはしないが、ややもするとドロドロしかねない感情がカラッと聞こえるのが最大の特徴。

近年は瀧川鯉昇、柳家喜多八(どちらもビクター落語会DVDシリーズに名を連ねている)とで「睦会」という三人会を行っており、高座から伝わる中の良さに思わずほほが緩む。どこまでも、見る者をあた たかい気持ちにさせてくれる噺家だ。


入船亭扇遊 其の壱
本格 本寸法 ビクター落語会 入船亭扇遊 其の壱 野ざらし/文違い ビクターエンタテインメント 2013.9.28 DVD VIBF-5493 2,667円+税