本寸法とは

本寸法とは、古典落語を語る上でよく使う言葉で、簡単に言うと、「一切省略のない、最初から最後まで通しの噺」という意味。

落語は寄席や、ホール等の様々な場所で語られる芸である為、その機会に応じて語る時間の長さ(尺という)に制約が生まれることになる。

例えば、寄席であれば出演者が多いため、短ければ5分、長くても30分など、持ち時間に開きがある。また、ホール落語だと、稀に40分やそれ以上という長時間を受け持つこともある。

このように、持ち時間がさまざまであるため、古典落語というものは、受け継がれていく中で、省略してもいい箇所が生まれてきた。それは噺の大筋に関係ない事や、今の時代にそぐわずに別途解説が必要になる場面などに多い。その省略可能な個所を削ることによって同じネタも、様々な尺で披露することが可能になっている。

本寸法とは、「一切省略されていない、本来の長さのままの噺」のことを表し、現在では非常に機会が少ないため、本格的な古典落語の代名詞になっている。

このビクター落語会は、「本格本寸法」を掲げた会であり、ここで収録された噺は、お馴染みのネタであるにも関わらずに、初めて聴く展開があったり、サゲ(噺の最後のオチのこと)すら違うことも少なくない。

先日、扇辰師の本寸法の「野ざらし」の後に高座に上がった喜多八師が「野ざらしって、わたしもやりますがね。あんな噺なんですね。初めて知りました(笑)」とまくらをふっていたが、そういうネタになるほど、本寸法というものは意味があるということを念頭において、この「本格本寸法」のビクター落語会の作品に触れてもらうと、よりその良さがわかっていただけると思う。